Finance+Technology=FinTech
フィンテックとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。ITを活用して金融、決済、財務サービスなどの世界にもたらされる革新的な技術やサービスをいいます。
これはクラウド・コンピューティングの普及に伴うコンピューティングのローコスト化とモバイルコンピューティングの本命であるスマートフォンの浸透によるものです。
クラウド・コンピューティング
従来はコンピュータで管理・利用していたソフトウェアやデータなどを、インターネットのネットワークを通じて利用する方式でした。
クラウド・コンピューティングを利用すればソフトウェアやサーバーの費用を大幅にプライスダウンします。
また、導入の手間を省く、場所を取らない、管理費も不要などのメリットがあります。
リーマンショックがフィンテック誕生の契機
フィンテックの始まりは2008年アメリカで起きたリーマンショックです。
金融業界を去らざるを得なかった人たちのノウハウとIT技術者がタッグを組んで新しい金融サービスやビジネスを起こしたいという強い意志から始まりました。
その前年、2007年にスマートフォンの代名詞であるiPhoneが発売され、その後、スマートフォンの普及によりフィンテックは目覚ましい勢いで世界中に広がっています。
フィンテックの世界的な広がり
フィンテックで世界をリードしているのがアメリカです。
チャレンジ精神を尊ぶアメリカでは政府が金融機関やベンチャー・キャピタルなどがスタートアップする際、市場に参入しやすい環境の整備などをバックアップしています。
フィンテック関連企業は、将来性のある投資先になっています。
イギリスでは財務大臣がグローバル・フィンテック・キャピタルを宣言するほどフィンテックに力を入れています。
推進を妨げる規制などを調整する役割を政府が果たしています。たとえばプロジェクト・イノベートでは新たなフィンテック企業の立ち上げをサポートしています。
そして中国。世界のフィンテックの中心地になろうとしている中国ではビットコインを支える技術、ブロックチェーンの活用に注目するなど官民一体でフィンテックに積極的な姿勢で取り組んでいます。
フィンテックの主なサービス
フィンテックにはどのようなサービスがあるのでしょう。代表的なものを取り上げます。
1.資産管理
マネーフォワード、ザイムなどが有名。自動的に入出金の情報を収集して分類・整理します。
銀行や証券会社、FXの口座、クレジットカード、スマートフォンの利用明細など複数の金融機関の口座情報を一括管理するアグリゲーションサービスや費目別の分類にも対応しています。
2.決済
スマートフォンアプリと銀行口座もしくはクレジットカードを連携させることで、キャッシュレスで決済できるサービスが広がっています。
パソコンやスマートフォンでもいつでもどこでも、ネットショッピングから実店舗まで多彩な決済が安全にできます。最近では個人間での送金もできるサービスもあります。
3.仮想通貨
ビットコインに代表される仮想通貨(暗号通貨)もフィンテックのサービスの一つとして分類されます。
暗号通貨をユーザーが安心して利用できるのはブロックチェーンという優れた基盤技術があるからです。
仮想通貨は、ドルや円などの通貨を使用しなくてもお金のやり取りができる新世代の貨幣として注目されています。
フィンテックのサービスのメインが決済インフラですが、ビットコインなどの暗号通貨は投資・運用可能な金融商品です。
4.ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、お金を借りたい人(借り手)とお金を運用して増やしたい人(貸し手)をマッチングするサービスです。
ソーシャルレンディングを運営する会社のWebサイトで良い案件だと思ったら投資家は、資金を投資をします。
借り手は運営会社から借りるのですが、投資家はWebサイトで借り手を知っているのです。個人でも小口の資金でも企業などに貸し出せるサービスです。
5. 経営・業務支援
法人向けや個人事業主などの会計や経理を自動化できるサービスです。
クラウド会計とも呼ばれています。
データやソフトウェアがクラウド上にあるので、インターネット環境さえあれば端末の種類や場所を選ばずに利用可能です。
銀行口座やクレジットカードを登録するだけで、自動的記帳・自動仕訳ができるので、簿記の知識が不要です。
5.投資支援
AI(人工知能)に任せることで自動的に資産運用を行ってくれる投資・資産運用サービスです。
ロボ・アドバイザーと呼ばれており、自動的に分散投資を提案及びアドバイス。投資の知識や経験がない方でも少額で利用できます。
フィンテックを支える技術
AI、IoT、ビッグデータ、ブロックチェーンなどフィンテックを支える鍵となる重要な技術について説明します。
1.AI(Artificial Intelligence)
ビッグデータ時代の今、金融機関が活用できるデータは実に莫大です。これまでの方法では分析が困難だったデータは、AI(人工知能)を駆使すれば気がつかなかったことを見つけることができます。
AIの活用もフィンテックには不可欠です。
たとえば銘柄選別をAIに任せるAI投資信託、格安の手数料でポートフォリオを提案、管理するAI搭載のロボ・アドバイザーなど話題を呼んでいます。
2.IoT(Internet of Things)
あらゆるモノがインターネットでつながるIoTの時代。
スマートフォンの普及でいつでもどこでもインターネットができるようになり、決済や送金、資産管理などフィンテックのサービスが実現しました。
IoTを活用することで可能になるのが、人やモノの流れを正確かつ安価に把握できることです。
例えば与信などに効果的。これはよりきめ細やかな金融サービスの提供につながります。
3.ビッグデータ
パソコン、スマートフォン、タブレットなどが普及して電子メールや画像など膨大な量のデジタルデータが蓄積されるようになりました。
これがビッグデータです。
ビッグデータを分析してビジネスに活用する動きが盛んです。
フィンテックでのビッグデータの活用は、融資審査です。
借入を申し込んでいる企業や個人に返済能力の有無を判断に使われます。
ロボ・アドバイザーでは資産運用の判断材料として。不動産ローンや保険料の適正な算出などにも利用されています。
4.ブロックチェーン
デジタルデータの改ざんが限りなく不可能というブロックチェーンは、ビットコインを実現した中核の技術。
ネットワーク上の複数のコンピュータで共有することで、金融決済などの取引情報を金融機関による集中管理を不要にします。
決済システムなどさまざまなフィンテック分野で使われているのはもちろん現在では不動産取引など金融以外にも利用されています。
AI(人工知能)の進化
米グーグル傘下のAI会社ディープマインドのAlphaGoが囲碁でトッププロ棋士などにも勝つほどの能力を身に着けたAI。
進化はまだまだこれからですが、発展度合いが格段に上がっています。
そのキーワードがAlphaGoにも導入されているディープラーニングです。
ディープラーニングは深層学習と訳されますが、ベースとなっている技術が人間の脳をモデルにしたニューラルネットワークです。
これによりいっそう学習する技術が進化して、、これまでAIが苦手だった抽象的なデータなどを認識できるようになるなど、より人間に近い考え方ができるようになりました。
この技術を応用することでAIは飛躍的に賢くなって、今後ますますいろいろな分野で貢献していきます。
もちろんその一分野にフィンテックもあります。
アメリカのフィンテック
ロボ・アドバイザー発祥の地であるアメリカは、常に日本の10年先を進んでいます。その一つが、超富裕層に向けた表に出ないファンドによるロボ・トレーダーの存在です。
日本でのロボ・アドバイザーは、まだ導入期で投資家もどちらかといえば初心者が対象です。
ポートフォリオの提案もローリスク・ローリターンなファンドが主体です。
しかし、アメリカの金融機関では対象を超富裕層に特化したロボ・アドバイザーという次の段階の新たなサービスを展開しています。
AIの進化により投資の経験値も高く、投資判断も的確で、プロの投資アドバイザーをしのぐ実績でありながら、セルフサービスなのでロボ・アドバイザーの場合、手数料が安いという特徴があります。
アメリカで成功すれば、やがて日本でも富裕層にセグメントしたロボ・トレーダーが登場するでしょう。
ロボ・アドバイザー
AIが投資を運用
ロボ・アドバイザーとは、投資家にAI(人工知能)を利用して資産管理や資産運用のアドバイスを行うシステムまたはサービスをいいます。
はじめに投資家がいくつかの質問に答えることで、資産規模やリスク許容度を自動的に判定し、割安な手数料で最適なポートフォリオなどを提案、管理してくれます。
有能な投資アドバイザーとして投資の初心者の方から上級者の方までベストな提案します。
日本人の投資スタイルが変わる
ロボ・アドバイザーの先進国アメリカではすでにおなじみで投資環境を一変しようとしています。
日本でもロボ・アドバイザーを導入する証券会社や銀行など金融機関が増えつつあります。
手間をかけずに、誰でもより確実な資産形成を可能にするロボ・アドバイザー。ロボ・アドバイザーが普及することで、日本人の投資スタイルも変化を遂げようとしています。
暗号資産・仮想通貨とは
フィンテックに欠かせない仮想通貨
フィンテックで重要な一翼を担っているのが仮想通貨です。
ビットコインなどが話題になったので、言葉を知っている方は多いでしょう。仮想通貨はどこの国の通貨でもなく、一般的な通貨と違って目に見える形では存在しないまさに仮想の通貨です。
仮想通貨とはインターネットを通じて取引や決済を行うことができる新しい決済手段です。公的な発行主体や管理者は存在しませんが、専門の取引所で円やドルなどの通貨と交換できるお金です。
最も有名なビットコインをはじめとして仮想通貨は現在世界で約3000種類以上が流通しています。
なぜ仮想通貨は投資対象になるのか?
それは仮想通貨が安いときに購買して高いときに売却すれば通貨であっても売却益が出るからです。いわば株式やFXの投資のようなものです。
日本では2017年4 月に仮想通貨法が施行され、仮想通貨取引所が登録制になるなど環境整備が進みました。
金融機関も独自の仮想通貨を開発したり、証券会社も仮想通貨に関連した金融商品を登場させたりなど仮想通貨市場はますます熱くなろうとしています。
ソーシャルレンディング
貸したい人と借りたい人をWebで結ぶ
ソーシャルレンディングとは、Web上で個人(貸し手)のお金を集め、借り手への投資に回す仲介サービスのことです。
ソーシャルレンディングは、インターネットオークションのような入札形式で借り手と貸し手とのマッチングを行います。
やりとりはSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で融資の理由や互いの与信についての情報を交換します。
そして貸し手は貸出金利を提示(入札)、借り手は貸し手の中から最も金利の低いものを落札して賃借が成立するシステムです。
ソーシャルレンディングはいわば個人間取引であり、融資額も小口が大半ですが、融資条件などがフレキシビティに富んでいます。
欧米や中国で活発、ソーシャルレンディング
海外では、2005年に世界初のソーシャルレンディングをスタートさせた英国のゾーパ、アメリカ最大のレンディング・サービスであるプロスパー、ソーシャルレンディングのパイオニアとして知られるのがアメリカのレンディングクラブなど、欧米はもとより中国でも盛んです。
日本では2008年にマネオ・マーケットが参入しました。
キャッシュレス決済
小銭やお札などの現金を使用しない支払い方法は「キャッシュレス決済」と呼ばれています。
従来ではクレジットカードや電子マネーが利用されていましたが、近年はスマホアプリを用いた「QRコード」決済が利用され始めています。
QRコード決済サービスの会社によっては、ポイント還元やキャッシュバックを行っているケースが多くなっているので、現金で支払うよりもお得に利用できるメリットがあります。
店舗側では、クレジットカードよりも利用手数料が安いので、ムダなコストをかけずにキャッシュレス決済を導入することができます。
クレジットカード、電子マネー、スマホ決済の特徴を生かして上手に活用しましょう。
手軽で簡単なおつり投資
スマートフォンの普及によって、誰もが1台の小型端末を持つ時代になりました。
世界中ではキャッシュレス化がどんどん進んでいますが、日本でもApple PayやGoogle Payなどのスマホ決済が徐々に浸透しています。
以前は、買い物した際に発生する小銭を貯金する方法がありましたが、現金を使用しなくなりお札や小銭を使う機会が減っています。
おつり投資は、電子決済をした際に、おつりが発生したと仮定して、端数の金額を投資として運用してくれる新しいサービスです。
買い物で貯まったポイントを投資してくれる、元手がかからないサービスも登場するなど、投資の裾野が広がっています。